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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)571号 判決 1961年11月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人植木昇の上告理由について。

上告審は原審の適法に確定した事実に覊束されることは民訴四〇三条の明定するところであるから、同法四〇七条二項にいわゆる「事実上の判断」とは、職権調査事項につき上告審のなした事実上の判断だけを指すもので、訴の本案たる事実に関する判断を含まないものと解するのが正当である。もし同条同項の「事実上の判断」を所論のように解するならば、差戻前の控訴審において確定した事実は差戻後の控訴審を覊束することとなり、民訴法の精神に反すること明白である。されば、原判決において、挙示の証拠により、上告人ら三名が被上告人に対し各その相続分に応じ原判示二八一、五〇〇円の六分の一の金員の支払義務がある旨認定判断したことは、差戻前の本件判決に対する所論当審判決と何ら抵触するものでない。また、その余の所論は、独自の見解に基づく主張に過ぎない。要するに、論旨は、すべて、独自の見解に立脚して原判決を非難するものと認められる。論旨は、すべて理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐)

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